「オーガニック」という言葉を聞いて、なにを想像するでしょうか?
おそらく、ある方は「無農薬栽培されたもの」と考えたり、またある人は「オーガニック認証を受けた製品のことだ」と考えたり、一人ひとり抱いている概念や意見はさまざまなのではないでしょうか。

それは国を超えても同じで、日本と海外とを比較しても、オーガニックという概念に対する価値観が大きく異なることがあるようです。

今回は、フィリピンにて栽培されたオーガニックのカカオやコーヒーの輸入販売を行っている合同会社ミッション企画様(https://www.missionkikaku.com/)に、フィリピンにおけるオーガニックの現状と課題、そして今後の取り組みなどについてお話を伺いました。

オーガニック事業を始めたきっかけと理由

オーガニックチョコレート

ーーミッション企画さんは、なぜオーガニック関連事業を始めたのでしょうか?

実は、以前は私自身も原材料などを気にせず色々食べていたのですが、今から15年ほど前にふと市販の商品の原材料に目が行くようになり、増粘剤や乳化剤など良くわからない材料が入っていることが気になり始めました。
特にパンなどは「そもそもこのようなものを入れなくても作れるはずなのに」と不思議に思い、自然のものだけで安心して食べられるベーグルを自分で作り始めたことがオーガニックに目覚めたきっかけだったと思います。

ーーオーガニックを意識するようになってから、なにか変化を感じることはありましたか?

不自然なものが使用された食品を避け始めると、自然のものとそうでないものが一口食べると分かるようになってきまして、添加物をうっかり摂ると頭痛やアレルギーなどの不具合が起こるようにもなってきました。
その後、夫に付いて7年前からフィリピンを行き来するようになったのですが、当時のフィリピンでは「オーガニック」という概念はほぼ通じなかった記憶があり、食べ物には本当に苦労しました。フィリピンは高温多湿の国ということもあって、パンは基本的に腐らないようになっていましたし……。なので、パンもお菓子も食べたければ自分で何でも作るしかありませんでした。

ここ数年はフィリピンでもオーガニックという言葉をよく聞くようになってきまして、オーガニックのレストランもちらほら出てきました。ですがオーガニック=高いで、相当な富裕層でないと利用できないのが現実です。
そんなある時、フィリピンで医師をする夫が無料で農村で診療をしている中、患者さんが家の庭で栽培しているというコーヒーの生豆を診察のお礼にと持ってきてくれました。コーヒーは頭の痛くなるものとして避けていた私ですが、試しに知り合いの日本人に焙煎してもらって飲んだところ、とても新鮮で嫌味がなく、すっきりと本当に美味しくて驚きました。

飲んだ後頭痛もせず、それをきっかけに実はフィリピンは無農薬でつくられている農産物があるのだということを知り始めました。ただ知られていないだけなんです。だからこそ、これは世に広まるべきだと思ったのがきっかけです。カカオも同じように、新鮮なカカオを味見した時の驚きが忘れられず、日本の皆さんに本物のホットチョコレートを広められたらと思いました。

フィリピンのオーガニック事情

ーーフィリピンでも無農薬栽培が浸透し始めたということでしょうか?

実は、無農薬で栽培している農家さんというのは意図して無農薬なのではなく、農薬を買うお金がないということで結果的に無農薬になっている、というのが正直なところでして、農家は貧しい、子供たちに農家を継がせたくない、とやる気を失っている農家さんが多い現実にも気づきました。
またフィリピンはスペインやアメリカの植民地支配を受けていた背景から自国のものに自信が持てなく、何でも輸入品の方が優れていると思ってしまっているところもあり、そのことがフィリピン産の農産物が海外で知られていない理由の一つかもしれません。

そこで私は真面目にされている農家さんが日の目を浴びていない現実を何とか助けてあげられないかと次第に思い始め、美味しくて安全なものなら日本に輸入して日本の皆さんに食べてもらったらどうかと思いました。
日本で認められたら農家さんの自信にもつながり、より良いものを作ろう、またお子さんたちも農家を継ごうと思うのではないか、そうやって良いサイクルを生み出すことができるのではないかと思ったのがきっかけであり私の想いです。

ーーフィリピンの現状をなんとか改善したい、という想いがとてもよく伝わってきました。ちなみにミッション企画様ではどのような商品を取り扱われているのでしょうか?

基本的に無農薬、遺伝子組み換えのない自然本来のものを取り扱っておりまして、現在はフィリピン産のコーヒーやカカオ製品(本物のホットチョコレートが作れるカカオマス、ココアバター、チョコレートなど)を主に取扱っております。
また日本でまだ見かけない珍しいマンゴーの粉やココナッツサイダービネガー、数年前から日本でも売られるようになりましたバタフライピーと言われる青いお茶も取り扱っております。

フィリピンにおけるオーガニック市場の現在のトレンド

フィリピンのオーガニックトレンド

ーーフィリピンにおける「オーガニック」に関連するトレンドや現状の課題などについて教えていただけますか?

まずフィリピンは貧富の格差がとても大きくありまして、モールやスーパー、住居は階層に分かれて存在しています。高級住宅地があるところには高級スーパーが存在し、そこには必ずオーガニックコーナーが設けられています。一方安いスーパーではオーガニックのものを見かけることはありません。

また都市部では週末にオーガニックマーケットが開催され、地元産の野菜や乳製品などが売られてとても賑わっており、外国人が多く通っています。
地方はと言いますと基本的に農薬の使われていないものがそのまま新鮮な状態で売られており、全部ではないですがオーガニックかどうかを気にする必要があまりないという印象を受けます。

ーーたしかに日本国内でも、所得が多い方のほうがよりオーガニックなものを選択している傾向がありますよね。

ただ、嬉しい変化としては農家さんも輸出を考えてオーガニック栽培にシフトし始めている点です。とはいえ、フィリピン国内の輸送機関がまだ発達していないのでオーガニックであるほど輸送中に野菜が傷んでしまい、売り物にならなくなってしまうということが起きているのでそこが改善されていく必要があると思っております。

ーー国によって課題はさまざまですが、オーガニック食材の鮮度をいかに保つことができるのかという点においてはフィリピンだけでなく日本においても言えることかもしれません。

ちなみに、日本の有機JASマークやアメリカのUSDAのような「OCCP」という規格がフィリピンにもあるのですがあまり知られておらず、オーガニックですか?とお店の人に聞くと適当に「はい」と言われ実はオーガニックでないということは良くあります(笑)。

また週末に都市部で開催されているオーガニックマーケットではオーガニックでないものも売られているのが現状で、『オーガニック』というくくりをきちっと定める必要があると感じております。さすがに「オーガニック」と言えば売れると思って何でもオーガニックと言ってしまう現状は良くないと思っております。
さらにオーガニックに限ったことではないのですが、実はフィリピンはコーヒーの生産国であるのに世界一インスタントコーヒーを輸入している国なんです。また、カカオの栽培地なのにスーパーやコンビニでは地元産のカカオを使用したチョコレートを見かけることはなく、すべて輸入品という本末転倒なことが起こっております。

日本のオーガニック業界にどのようなアクションをしていきたいか

ミッション企画のオーガニック

ーーミッション企画様は、「オーガニック」をどのように捉えていますか?

人間の手をできるだけ加えておらず、農薬も使われていない自然本来のもの、と考えています。日本のオーガニック市場はまだまだ小さいですが、日本のオーガニック業界を変えたいというより、日本の消費者の皆さんの意識を一人でも変えられたらと思っています。

「オーガニックは高いから」、「オーガニックなものにこだわった時期もあったけど続かなかった」、などと日本の友人から聞くことがあります。確かにオーガニック製品はそうでないものに比べて値段が高いですが、オーガニックでないものはなぜ安いのか、不自然なものや化学調味料を食べ続けることのリスクはないのか、それは本当に安心して家族に食べさせられるものなのかというように、常に疑問をもって自ら考えて選択することが大切だと思います。

ーー言われてみれば、日本で手に入れられる食品はなんとなく安心感があるものの、その食品に何が使われているのか、なぜその値段なのかということまで意識が向いていない方は多い気がします。

たとえば、パッケージに『無添加』とうたわれているから安心だ、とすぐ思ってしまうのはどうなのでしょうか。今の世の中は便利になった分、様々な病気が増えてきましたので一旦本来の人間のあるべき姿に立ち返るべきだと思います。私たちは、そのきっかけを与えることができればと思っております。本来はすべてオーガニックだったのですから、オーガニックは特別なものではないと思うんですよね。
その本来の味が忘れられてきてしまっている気がするので、自然本来のものをお届けしていくことが私たちにできる第一歩だと思っております。

これからも、オーガニック市場に限ったことではなく、まっとうに活動されている生産者の方と消費者の方を繋げる役割を果たし、消費者の方に気づきを与えながら皆さんの健康と幸せに貢献することができれば嬉しく思います。

取材協力

合同会社ミッション企画(群馬県前橋市)
https://www.missionkikaku.com/